自衛官になろうと考えた時に、自衛隊で管理職として働きたいという方は幹部自衛官となる必要がありますが、その幹部自衛官になるルートの一つが幹部候補生採用試験です。
一般曹候補生や自衛官候補生とは異なり、試験の難易度や種類も多く、何をどうしていいか分からないという方もいらっしゃるかと思います。
そこで、今回は海上自衛隊の一般幹部候補生を二度受験し二度とも合格した私が出題の傾向や学習方法について詳しくお伝えしていきます。
この記事を読めば、自衛隊の一般幹部候補生採用試験に向けての対策方法が分かるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
一般幹部候補生とは
各自衛隊の幹部自衛官となる者(飛行要員含む)を養成する制度です。大学の文系および理工系から進む通常の幹部候補生コースが「一般幹部候補生」。ここには、陸上・航空自衛隊の音楽要員及び海上・航空自衛隊の飛行要員が含まれます。採用と同時に陸上・海上・航空の各自衛隊曹長に任命され、幹部候補生として一定期間の教育を受けた後、一般幹部候補生は3等陸・海・空尉(院卒者試験合格者は2等陸・海・空尉)に昇任、幹部自衛官となります。
https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/about/recruit/jieitaikambukoho.html
大卒で自衛隊を目指す方の選択肢に入ってくる採用区分かと思います。一点よく間違えがちなのが、試験はあくまで「大卒程度」の内容が出題される試験なので、試験を突破できる学力さえあれば大学を卒業していなくとも受験可能です。(院卒者試験については大学院卒の条件があります。)
「幹部」というのは諸外国での士官・将校という部類にあたります。下士官の上に位置する階級で、大将とか少佐とか中尉とかの階級が付いている人がそうです。
曹士が現場のスペシャリスト(専門職)であるならば、幹部はゼネラリスト(管理職)を担う人材となります。一般幹部候補生として採用される人材は、将来的には部隊単位というよりは自衛隊全体の運営を行うことを期待されます。
毎年の募集人数は100名~200名程度で、慢性的な定員割れの起きている自衛隊においてもかなりの狭き門となっています。
曹士は33歳未満まで募集対象年齢となっていますが、幹部候補生は以下のようになっています。
[大卒程度試験]
https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/examination/schedule/index.html
22歳以上26歳未満の者(20歳以上22歳未満の者は大卒(見込含)、修士課程修了者等(見込含)は28歳未満)
[院卒者試験]
修士課程修了者等(見込含)で、20歳以上28歳未満の者
採用されると、入隊と同時に曹長の階級に任命され、1年程度陸・海・空それぞれの幹部候補生学校でいわば新入社員教育を受けた後、実習を経て部隊に配置されます。
採用試験の対策方法
一般幹部候補生の採用試験は以下の科目から成り立っています。
- 筆記試験(一般教養、専門択一、専門記述、小論文)
- 口述(面接)試験
- 身体検査
試験は一次試験と二次試験で構成されており、一次試験では筆記試験(一般教養、専門択一、専門記述)が、二次試験では小論文、口述試験と身体検査が行われます。もちろんですが、一次試験に合格しないと二次試験は受験できません。
それでは実際にどのような対策が必要になるのか見ていきましょう
筆記試験の対策方法
筆記試験は五肢択一の問題が出題される一般教養試験と専門択一試験、大学等の専門分野に関する内容を選択して出題に対して文章で回答する専門記述試験、指定されたお題に対して文章で回答する小論文試験があります。
一般教養試験・専門択一試験・専門記述試験は一次試験、小論文は二次試験で実施されます。
一般教養・専門択一
資格試験等でよくあるマークシート方式での回答です。
一般教養試験と専門択一試験は大学の教養科目を修了している程度とのことです。
一般教養試験では国語・数学・理科・社会・英語の科目が出題され、他の公務員試験でも出題されるような資料解釈や数的推理の問題もあります。
試験時間は180分あります。
国家一般職の試験と同程度の難易度と言われていますが、両方受験した所感としては、国家一般職では選択肢の文が長く、自衛隊の方は短いため解きやすさで言えば自衛隊の方が解きやすいと感じました。
専門択一試験は人文科学、社会科学、理・工学のうちから1科目選択して回答します。ただし、音楽要員志願者は音楽科目を受験することになるみたいです。回答数は20問です。
試験時間は110分あります。人文科学、社会科学を選択した場合は十分に時間があるでしょう。筆者は理・工学を選択したことが無いためこちらについては分かりません…。
専門と名前に入ってはいますが、一般教養試験と同程度の難易度ということもあり、少しだけ深掘りしたようなものなのであまり気負う必要はありません。
共通する学習法として、まずは過去問何年分かを解いてみて、自分の苦手な分野を特定してみましょう。過去問は自衛官募集ホームページで公開されていますので、自分で印刷して使うことも出来ますが、担当の広報官に聞いてみるとすでに印刷したものを貰えることもあります。印刷代もばかになりませんので一考の余地ありです。また、通称迷彩本と呼ばれている問題集を買って解くのもありだと思います。
不得意なものが分かったら、それに合わせて対策をしていきます。
一例として、計算問題が苦手であれば公式を覚えて問題演習、暗記系の科目が苦手であれば間違えた問題をノートなどに書きだして音読して記憶に刷り込んでみるなどやり方は各人でやりやすい方法をとると良いと思います。
より詳しい対策方法は以下の記事をご覧ください。
専門記述
記述とある通り、文章で回答します。
難易度としては大学専門課程修了程度とのことで、ここでようやく大学での専攻を活かして回答することとなります。
問題としては心理、教育、英語、行政、法律、経済、国際関係、社会、数学、物理、化学、情報工学、電気、電子、機械(造船を含む)、土木、建築、航空工学、海洋・航海のうちから1科目選択して回答します。ただし、専門択一と同様に音楽要員志願者は音楽科目を受験することになるようです。
1科目につき1問ないし2問が出題されます。
試験時間は90分ありますが、これまでの択一試験と違い時間に余裕はありません。
さらに過去問も公開されていないため対策としては日頃大学で専攻している分野を広く復習しておくしかありません。
専攻分野の問題があまりに難しい場合、教養科目として履修した分野の知識を思い出して回答するというのも一つの手です。
専門記述試験は一次試験で実施されますが、一次試験では採点されません。二次試験の口述試験・小論文と同時に採点され、合否を決定するとのことです。
小論文
一般幹部候補生試験における小論文試験は、お題が出題されて、それに対しての回答を文章で書くというものです。
試験時間は60分、原稿用紙は1624字です。筆者の受験当時はこの半分の量だったので、いつからか倍に増えたようです。
お題のテーマとしては社会問題に関してのものが出題されます。筆者の受験時は2つお題が出題され、ひとつは防衛に関すること、もう一つはそれ以外の政策や環境問題などが出されてどちらかひとつを選択して回答するというものでしたが、最近では防衛に関することが出題されることは少ないようです。
小論文試験については過去問が公開されていますので、実際に書いてみて広報官に添削してもらいましょう。地本によっては二次試験対策に力を入れていて、面接練習会と同時に指導もしてくれることがあります。
より詳しい対策方法は以下の記事をご覧ください。
口述試験の対策方法
面接のことを自衛官採用試験では口述試験と言います。これは他の採用区分と対策は変わりません。
予想される質問は過去問を広報官から教えてもらいましょう。
どんな質問があったかを教えてもらったら回答を予め書き出してみましょう。
だいたい回答が出来上がったら広報官に面接練習をお願いしましょう。入室から退室までの実際の流れも交えて練習できるので、自分の不足点などが明らかになり、本番での失敗を減らせます!
ここで100%しっかりした回答が用意できていなくても大丈夫!
広報官との練習でアドバイスをもらい、修正していきましょう。
地本によっては一次試験合格者を対象に模擬面接練習会を開催してくれていますので、積極的に利用しましょう。
より詳しい対策方法は以下の記事をご覧ください。
身体検査の対策方法
身体検査は他の採用区分と変わりありません。自衛官採用の身体基準を満たしているかを検査します。
これについてはケガ・病気をしないということが一番の対策になります。
虫歯などがあったら予め治しておきましょう。
まとめ
今回は一般幹部候補生採用試験の対策について解説してみました。
まとめると以下の通りです。
- 筆記(一般教養、専門択一):過去問を解いて苦手を発見、暗記や問題演習で備える
- 筆記(専門記述):大学の専攻分野を一通り復習
- 筆記(作文):過去問を実際に書いてみて添削してもらう
- 口述試験:よくある質問を広報官に教えてもらい、面接練習
- 身体検査:ケガや病気をしない
試験なのでこれをやれば合格間違いないとは言えませんが、少なくとも全く情報が無い状況から手探りで対策を進めるよりかは合格にグッと近づくと思います。
この記事が皆さんが一般幹部候補生として採用されるための一助になればと思います。
その他、自衛官採用試験について知りたい方はこちらの記事もご覧ください↓
それではまた次の記事もよろしくおねがいします。
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