自衛隊と言えば厳格な階級社会というようにイメージされる方も多いかと思います。
実際そうでもあり、一方でそうではない部分もあります。純粋に階級がものをいう場合もあれば、年齢・自衛隊でごはんを食べた回数(勤続年数)など時と場合によって複雑な事情が絡み合います。
今回は普段、意識することの無い自衛隊の階級についておおざっぱではありますが解説してみようと思います。
この記事を読めば知られざる自衛隊社会の意外な一面を発見できるかもしれません。
ぜひ最後までご覧ください。
この記事で分かること
- 自衛隊の階級はどういったものがあるのか
- それぞれの階級はどういった役割があるのか
自衛隊の階級
https://www.mod.go.jp/j/profile/mod_sdf/class/
自衛隊は上は将から下は2士まで16の階級に分かれています。
このうち、3尉~将までを幹部、2士~曹長までを曹士と区分します。
幹部はさらに将補と将からなる将官、3佐~1佐までの佐官、3尉~1尉までの尉官に分かれています。
曹士については、3曹~曹長までが曹、2士~士長までが士に分かれています。
いずれにしても、数字が小さくなるほど階級は上となります。
曹長と3尉の間に准尉という階級がありますが、これは尉と付いていても幹部ではありません。
かといって上の表では曹にも入れられていませんが、役割としてはベテランの曹であり、曹士を束ねて幹部を補佐するというものになります。諸外国では准士官という立場にあたります。
諸外国の軍隊に当てはめてみると、幹部=士官(将校)、曹士=下士官兵となります。
幹部自衛官と曹士自衛官
幹部自衛官
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Japanese_sailors_jmsdf.jpg
幹部は自衛隊という組織運営の中心的役割を担い、指揮官や幕僚(=参謀)といういわば管理職の立場の自衛官となります。
知識としては広く浅く網羅しているような感じで、細かい専門知識については現場の曹士に補佐してもらうような形となります。
将官
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:USNavy_Royal_Navy_Japan_Maritime_Self-Defence_Force.jpg
将官は将補と将の2階級があり、○○司令官や○○総監など大きなくくりの部隊を指揮する立場となります。
階級章で見ると、○○幕僚長の役職には別の階級章が設けられていますが、階級としては「○○幕僚長たる将」ということで将の1つということになっています。
諸外国の階級に当てはめてみると、幕僚長たる将が大将、将が中将、将補が少将となります。
将官は定年の早い自衛官の中では最も高い年齢が設定され、規定上は60歳~62歳までとなっています。
同期の中でも一握りの人材が昇任できる階級であり、実力の他に政治的な適性も求められるようです。
佐官
防衛省・自衛隊ホームページ, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=86482957による
佐官は3佐・2佐・1佐の3階級があり、連隊長や艦長などの役職を務めます。
諸外国の階級に当てはめると、3佐が少佐、2佐が中佐、1佐が大佐にあたります。
一般幹部候補生として採用された人は2佐までは昇任できるというように言われていましたが、最近ではその定説も崩れてきているという話もあります。
一般幹部候補生は自衛官の採用区分の1つです。採用区分については以下の記事を参照してみてください。
尉官
防衛省・自衛隊ホームページ, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=86484799による
尉官は3尉・2尉・1尉の3階級に分かれており、小隊長や分隊長・分隊士といった役職を務めます。
諸外国の階級に当てはめると、3尉が少尉、2尉が中尉、1尉が大尉にあたります。
一般幹部候補生で採用された人は1尉までは同期で一斉に昇任します。
幹部候補生学校を卒業した幹部候補生はこの尉官から幹部自衛官人生を始めることになります。
ベテランの曹から選抜される幹部予定者課程を経た幹部自衛官はこの尉官で定年となるようです。
曹士自衛官
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:JMSDF_crewStaff.JPG
「曹」は、専門分野における技能を有するほか、士を直接指導し、幹部を補佐する立場にある者。「士」は、曹などの指揮下で各種の任務を直接遂行する立場にある者のこと。曹と士の人数を合計すると、自衛官の定員の約8割に及ぶ。
https://www.mod.go.jp/j/profile/mod_sdf/class/
幹部が管理職であるならば、曹士は実際に作業を行ういわば手足として動く自衛官となります。
幹部が広く浅く専門知識を有しているのに対し、曹士はスペシャリストとして自分の専門分野に精通することが求められます。
曹
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:US_Navy_100622-N-6674H-008_Sailors_aboard_the_Japan_Maritime_Self-Defense_Force_guided-missile_destroyer_JS_Atago_(DDG_177)_look_out_at_Joint_Base_Pearl_Harbor-Hickam_as_the_ship_arrives_for_Rim_of_the_Pacific_(RIMPAC)_2010.jpg
曹は3曹~曹長までの4階級に分かれています。
幹部候補生の採用区分で採用された人は最初の階級として曹長に任命され、在校中は曹長として教育を受けます。敬礼などの所作も曹の階級の者としての動作となります。(例:頭右(かしらみぎ)の号令の際には挙手の敬礼はせずに顔だけ向ける など)
曹以上の階級の自衛官は非任期制隊員となり、民間企業で言えばようやく正社員のような立場となります。
上記引用にもある通り、実動の人員としての技能を持ちその中核でありつつ、士の階級の立場にある人員を指導する者となります。
ベテランの曹(曹長や1曹)ともなると専門分野におけるエキスパートとなり、艦長などの幹部からも一目置かれる立場となります。
幹部候補生学校を出たばかりの幹部自衛官は、先輩幹部に加えてベテラン曹士からも多くの知識を教えていただくこととなります。
ややもすると自衛官は階級が全てと思われがちですが、やはり年の功と言いますか、重ねた経験は新任幹部が敵うものではありません。
スペシャリストの道を極めることも出来ますし、3曹昇任後に一定年数が経過すると部内の幹部候補生課程の受験資格を得ることができ、幹部自衛官となることも出来ます。
士
防衛省・自衛隊ホームページ, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=86482400による
士は2士~士長までの3階級に分かれています。
一般曹候補生や自衛官候補生、航空学生として入隊すると最初の階級が2士となります。
一般曹候補生は入隊と同時に2士に任命されますが、自衛官候補生は所定の教育を修了すると2士に任命されます。
その後、2士として6か月経過すると1士へ、その1年後に士長へと昇任します。
士の階級は任期制の自衛官であり、自衛官候補生として教育を受ける3か月+陸上自衛隊の一般隊員は1年9か月、陸上自衛隊の技術職隊員と海上・航空自衛隊は2年9か月が1回の任期となります。
1任期ごとに継続任用か退職かを選ぶことができ、いわば契約社員のような立場となります。
任期中に一般曹候補生や一般幹部候補生を受験したり、曹への昇任試験を受けてステップアップすることも出来ます。
まとめ
今回は自衛官の階級について簡単に解説しました。
幹部と曹士の役割や違いなど、なんとなく分かっていただけたのではないでしょうか。
まとめると以下のような感じです。
- 自衛隊の階級は16個に分かれている
- 幹部はゼネラリスト、曹士はスペシャリスト
- 純粋に階級が高ければエラいというわけでもなく、勤続年数がものをいう場面もある
この記事が自衛官採用試験を受けようとしている方の参考になれば幸いです。
自分の目指したい自衛官像を思い浮かべてみて、幹部と曹士どちらが合っていそうか見極めてから受験するのも良いかと思います。その方が口述試験(面接)時に意気込みを述べやすかったりもしますからね!
それではまたよろしくお願いします。
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